年末からちょこちょこ読んでいた小説です。内容が面白い反面、途中でつらくなっちゃう部分もあったり…オフがゴタゴタしてなかなか読み込めなかったりと、かなり間が空いちゃったこともあるのですが、4ヶ月越しで読み切ったですよ。
そして、あまりにも長〜いお話で……何と言っていいのか表現しきれません。でも、いろんな人に読んでほしいお勧めな超大作なのです。
で、感想書く能力のない香月がとる手段は…キャラ語り…(^^ゞ
●フィッツ
暗殺者なのに、妙に純粋さが抜けないこの物語の愛すべき主人公。
フィッツという人物がとても魅力があるので最後まで読めたんだと思いますね。これでもか、これでもか、と多くの苦難に見舞われる姿は物語だとしても、あまりに過酷で哀れです。でも、彼の性格上、嫌だ嫌だと思いながら結局それから逃げることはできないし、しないんですよね。読者はたいへんじれったい気持ちになります。そして、何だか時代(?)は違えども現代社会のサラリーマンみたくて、いつの間にかシンクロしてます(笑)
フィッツの視点で物語が進んでいくので、物語の前半にあたる少年時代は、彼の思いというのが書き切れていない気がしました。後半では、父親や母親に対して多少なりとも否定的な思いが描かれてきますが、それでも少年時代の彼の父親や母親や王(祖父)に対する思いが描き切れていないなぁと思います。あと、少年時代のおじさん達(ヴェリティ&リーガル)との関係ももう少し書き込んだ方が良かった気がします。それとも作者はあえて意図してそうしたのかな。
そして、彼の女性関係ですが……運がないなぁって気が…。何人か候補は出てきますが、どうもこの人ならっていう人がいない〜。フィッツは、モリーを盲目的に愛しているようですが、価値観がまるで違うので最終的にくっついても絶えず諍いが絶えない気がするんですよね。あの結果は、なるべくしてなったような気がします。だからといって、スターリングでもなぁ。道化が言うように、彼女はフィッツの肩書きに恋しているとしか思えない。……ふりかえると、一番彼を掛け値なしで愛してくれたのってペイシェンスぐらいではないだろうか。
●シュルード王
フィッツの人生を完全に狂わせた諸悪の権化。
↑こう思うと沸々としてきます。フィッツを自分のものにするシーンも道具を扱うようで嫌でした。
ところで、この世界での正統な血筋というのがよく分からないんですよね。庶子だと扱いが全然違うのは理解できるんですが、フィッツの子は、継承者として利用されようとしますよね。それは、ヴェリティの子として育てるからなのかな。でもそれって、本当に正統なの?って思ってしまう。それなら、フィッツが王様になってもいいんじゃね? どうも、分からないのですよね〜。結果的に、ヴェリティは認めているけど、王位継承者となる者の血はフィッツから来るものだし……それでいいのですか? シュルード王。
●シヴァルリ
まーーーーたく一度も姿を現さず、そのまま物語という舞台から姿を消した、この世界で最もお騒がせな王子様。
彼とフィッツの実母の間にいったい何が起こったのか、結局分かりませんでしたね。この辺りに萌を期待したのに〜。
若気の至りのせいで、継ぎの王子の地位をあっさり捨て、山奥に隠棲してしまうのですが、彼の行動は今一つ理解できません。香月が王様だったら、よそに子をつくったからって、息子に継ぎの王子の地位を捨てさせたりしませんよ。なんなら城に幽●しちゃいます。←おいおい。そして、もう一つ理解できないのですが、どうして、彼は、フィッツをバックキープから別の場所に移すということをせず、ブリッチに預けただけで安心してしまったのでしょう。父親が自分の息子を暗殺者にするなんて思ってもみなかったのかな。国同士のやり取りになれているだろうはずの王子らしくない行動だと思います。
彼と弟のヴェリティ、そして腹心であるブリッチとの絆をもっと知りたかったですね。あ、何もかも話していたわけではないみたいだから、腹心というのはちょっと違うかな。
●ヴェリティ
いつの間にか正統な王子様。
実は、このお話でもっとも萌えたのが「フィッツ×ヴェリティ」だったりします。フィッツが、「俺の王子〜」と宣ったとたん、脳内がぐらぐらした記憶は一生忘れません。←アホ。
ヴェリティは、かなりのお兄ちゃん子だったに違いないと香月は信じています。ヴェリティとフィッツの繋がりは赤い船団が訪れてから急速に強まっていくのですが、もっと前からそうなっていればなぁと思われてなりません。そうすれば、フィッツは父親のことをもっと知ることもできただろうし、<技>を理解する機会もできただろうから。本当に残念です。
さて、ドラゴンを起こす方法は、『血+<気>』だったわけですが、ヴェリティがドラゴンになってから、そのからくりを披露するってのはどうなのと思ってしまいました。だって、ヴェリティは、どんなに努力しても起こすことができなかったドラゴンが飛んでくる姿を自分がドラゴンになってから目の当たりにするわけですよ。どうして?って思うじゃないですか。王ひとりを犠牲にして呼び覚まさせたたった一匹のドラゴンだったのに、後ろから大群がばっさばっさと飛んでくるんですよ。なんでじゃー!とか思うじゃないですか。たぶん香月だったら大群のドラゴンを統率するどころじゃなくて、一発殴りでもしないと気がおさまらないですね。
●リーガル
妬みと恨みでできたまさしく帝王。
たぶんね、彼にも色々あったんだと思うのですよ。でも、母親に刷り込まれた疑惑で押しつぶされちゃったんですね。もう、フィッツを苛める悪い奴と憎んでしまう反面、ただ悪者として片付けてしまうのもどうかなぁ〜と。何か、もっといい方法はなかったのかなと思わずにはいられません。
●ルリクス
さわやか好青年王子様。人を疑わないことが裏目にっていうか、生死の分かれ目に…うぅ。
いいキャラしていたので、毒殺された時はあっけにとられてしまいました。シヴァルリと彼って、政治を絡めなければきっと言い友達だったんじゃないかなぁと。本当に、おしいキャラです。
●ケトリッケン
『お兄様を苛める悪い人』……という理由から毒を盛るスゴイ女性。一途なため妻にすると旦那は不運になる…傾向があるような……。
ナイトアイズに妙に好かれちゃってちょっと嫉妬〜というか、無鉄砲さが時に気に障るというか、結果的にフィッツのことを大事に扱っていなくてちょっと腹が立ったりと……あまり好きなキャラクターではないです。ごめんね、ケトリッケン。
で、最後のヴェリティとのチョメチョメチョメは、実はフィッツだって知ってるんでしょうか。よく分からなかったのです。
●ペイシェンス
おきゃんな人妻。いつの間にか女帝。
彼女が初めてフィッツとまみえるシーンが好きです。自分の夫が継ぎの王子の地位から降りなくてはいけなくなった原因、でもその血を唯一受け継いだ子供に会うのです。憎しみと期待がごちゃ混ぜになった気持ちだったんじゃないかなと思います。少し錯乱気味な気質の彼女ですが、愛すべきキャラです。というか、物語で唯一好きな女性キャラ。
●ブリッチ
フィッツの父親的存在。
彼無くしてフィッツという人物はいなかっただろうかと。フィッツが暗殺者になりきれないのは、彼の腕が悪かった(T_T)というのもあるかと思うのですが、ブリッチに育てられたというのも起因していると思うのですよ。ははは。
彼もフィッツと同じように色々なものを無くしてきているのですが、結果的に勝ち組ではないかと、香月は考えております。(この作品に完璧な勝ち組はいませんが。)だって、ペイシェンスはシヴァルリにとられちゃったけど、その息子の嫁さんはゲットできちゃったんですから。だけど……この勝ち方はフェイント過ぎだよね。
フィッツが生きていると知っていれば、彼は絶対モリーを受け入れなかっただろうと思うんですよね。だから、死ぬまでフィッツが生きているのを知らないで欲しいんですけど……物語での立場上、それは無理かなぁ。
●シェイド
多分、愛より家のために動く人。
彼の愛の言葉は信じちゃいかんぜよ。と、フィッツに注意したいんですが、言っても無駄な気もする。
●道化
どこまでいっても道化は道化。
フィッツへのこだわりは尋常ではないので、シェルード王を慕っていた理由がちょっと分かんないです。フィッツが自分と運命を共にする触媒だと知っているのなら、シェルード王はその足がかりにしかならないと思うのですよね。なのに、時々フィッツを不利な状況に追い込んでいるようで嫌なのよね。
どうも普通の人間と違い、出世魚みたいな成長を遂げている道化。このまま、大きくなって性別も変わると面白いなぁ。いやこの作者のお話ではそれはない気がする。フィッツにとってはいつまでたっても鼻持ちならない友達の気がする。
『白の予言者』と『触媒』の話は、まだまだ続きそうな終わり方でしたね。触媒の子供の予言も気になるのですよ。
●ガレン
フィッツのことが大嫌いな<技>の長。長としてはできそこないで痛々しい。
弟のために手を尽くしたんでしょうが、報われなかったですね。
彼はシヴァルリの<技>で、シヴァルリに絶対的な忠誠を尽くすように命じられたわけですが、彼の弟もフィッツに同じような<技>をかけられたんですかね? なんだか哀れな兄弟です。
●モリー
強い。強すぎてフィッツとは相容れない気がする女の子。
フィッツには悪いけれど、彼女はある程度人生を積んで、彼女の気性の荒さも大きく包み込んでくれるような男性の方があってるような気がします。だからフィッツと寄りを戻して欲しいと思いつつ、戻ってもまた別れるだろうなぁと思わずにはいられませんでした。きっと、フィッツの<技>&<気>のことも知ってしまったら、受け入れられないと思うんだよね。ウソを付いているとかいって、何らかの理由を並べて拒否してしまうんだろうな。決して責められることではないけど……。
●ナイトアイズ
フィッツは、兄弟。兄弟の兄弟も皆兄弟。世界に広めよう兄弟の和……。つまり群れのことでしょうか。
最初は、フィッツを獣(悪?)の道に誘う小悪魔っぽく思ってたんですよね。だけど、フィッツがピンチになると命をかけて助けてくれる姿を見て涙したことがどれほど多くあったことか!もう、惚れてしまうよナイトアイズ。大好き!
●スターリング
フィッツに付きまとう吟遊詩人。愛も重要だけど、英雄の物語が大の好物。
彼女の過去話を聞くと、つらい人生を歩んでいたんだなぁと。その分自己愛に目覚めてもしようがないのかなぁ。
ただ、言い訳が多いのが気に障るのよね。人には事情がそれぞれあるんだから、フィッツが嫌だって言ったらダメなのぉ〜。
●ケトル
もったいぶってる元陣のメンバー。200才超。
ちょっかい出しておいて真相を見せない姿にはフィッツでなくとも苛立ちを増幅させます。ケトリッケンにもさぞや嫉妬に苛まれたでしょう。
スタンションって、イケメンだったみたいだから、きっとイケメン好きかと思われます。フィッツのことも『私がもっと若ければ…』とか実は思ってそうで笑えます。
フィッツのことを気に入っているようだったので、もっと旅の道中に<技>のことを教えてあげれば良かったのにねぇ。
このお話、第一部〈ファーシーアの一族〉の続きに、第二部〈
道化の使命〉があります。第一部と同じように三部作のはずで、1月に1部目の3冊がでています。
第一部から15年後のお話です。フィッツはいくつになっているんだっけ?
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