純粋に映画を堪能したかったので、原作という予備知識はあえてオミットして鑑賞いたしました。北欧のストックホルムという、自分にはあまり馴染みのない風景やそこでの人々の生活環境が物語を幻想的というか、叙情的にしていて、とても引き込まれました。
主人公のオスカーはいじめられっ子だけど、それを狂気に変えて自己を保っているちょっと危うい感じのする少年。そして、寝る時は必ずパンツ一枚になるのも危うい。ってか何故?
そんな危うい少年オスカーに「友達にはなれないと」言いながら徐々に近づいていくのがエリという少女です。エリは、オスカーのこの危うさに多少なりとも惹かれたのではないかと思います。
子供同士の触れ合いに『おもちゃ』を持ってくるところは微笑ましかったですね。確かにお友達になりたい子が持っていない『おもちゃ』でまずは興味を引こうとするのが子供の常套手段であり、恋愛の第一歩であります。ただ、ここでニ●テンドーとか持ってこられたら香月は暴れただろう。ルービックキューブでよかった。そして、とても古典的だけど、いい小道具になったのが『モールス信号』です。お隣同士の二人は会えない時にこれで意思疎通するんですよ。いい演出です。
映画では、エリと養父(?)の関係が曖昧に描かれていて、これはもしかして……とても不道徳な関係なのかと疑ってしまった。最初は、エリとオスカーの関係が至る結末を暗示するための演出なのかとも思ったのですよ。そうだったら嫌だなぁ。救いがないなぁと。でも、エリは養父に愛情を全く抱いてないんですよね。ただ、ただ、養父がエリに尽くしているだけのような気がしてならないんですよ。原作では、この関係もしっかり描かれてるのでしょうか。原作読んでみるべきなのかな。
ところで、この養父がエリのために血を収集するために暗躍するのですが、今一つホラーっぽくない。人の往来がそれなりにある場所で周りを気にしながら収集作業をしたり……ふつう場所移すでしょ。グループで帰宅しようとしている一人を捕まえたり……ふつう一人を狙うでしょ。ちょっとヘマしすぎてる気がします。と、歳だからなのか?
エリとオスカーに話をもどしませう。
すっかり親しくなったオスカーは、エリにとうとう告白をします。ういういしぃ〜。しかしここに怖ろしい罠が……
「僕と付き合ってくれる?」
「無理だわ。女の子じゃないもの」
多分、多くの観客が『それって…どういうことなのエリ?』と突っ込みを入れたくなったと思うシーンです。映画はこのことにあまり言及せずに進んでいきます。そ、それでいいのか!?
しばらくして、エリの着替えのシーンを覗いたオスカーが、ぎょっとするシーンがあるんですが、そこ…モザイクっていうか、塗りつぶされてて……最初何が言いたいのか分からなかったのですよ。後で、パンフレットみて理解しました。あるはずのものがあるのではなく、あるはずのものが×××されててないという……えぇぇ〜な話です。オスカー君は香月よりも事実を簡単に受け入れたようです……ははは。
一方、養父の死をきっかけに、周囲の人間にとって、エリの行動が急速に危険味を帯びてきます。エリの正体に疑問を抱く者も出てきます。
ある時、オスカーはいじめられっ子に報復をし、エリに喜々と報告するんです。興奮し過ぎたオスカーは、持ち歩いていたナイフで自分の手を切り、エリに「血の契りを結ぼう」と叫びます。エリは自分を抑えられず獣のようにその血を啜ることに……。そんな自分を見られたエリは、己を恥じるかのようにオスカーの前から姿を消すんですね。
一人になったオスカーは、再びいじめっ子にいじめられます。いじめはより本格的になり、オスカーの命さえも脅かすことに……人間は時として吸血鬼よりも怖いです。
それを助けに来たのはエリ。かなりホラーな演出でしたが、助けられた時のオスカーの嬉しそうな表情があまりにも甘美で、何て素敵な作品なのとうっかり涙が出ました。
その後、オスカーが列車に乗っているシーンに。そして、オスカーの足下にある鞄からモールス信号が聞こえてきます。オスカーは、たどたどしくそのモールス信号に返事をするのです。
ここの翻訳が出ていなかったのでいったい二人がどんな会話をしたのか分からなかったのが残念です。誰か分かったから教えて欲しいな。
香月的には、「オスカーいる?」「ココにいるよ、エリ」って感じかなと甘い妄想をしています。
さて、いきなりですが……邦題名。もっと叙情的にならんものかなぁと思ってしまいました。どうしてこう何というかベタなんだ。エリが少●ではなく、少●と気付いた時点で、さらに騙しではないかとも。原作そのままでもよかったんでないかと思ってしまいます。作品が素晴らしいだけに口惜しい。
●『
Let the right one in』(公式HP)
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